ストリング理論が「Not Even Wrong」?

最上の日々
ストリング理論は科学か(P. Woit) Amazon

ストリング理論を批判した事で話題になった本 "Not Even Wrong"の翻訳。

私も、場の理論が物理学の本筋だと思うので、共感する。 ああ、それが私が愛した物理学と同じ種類の物理学だよなあと。

他への批判をするにせよ、それが 純粋に物理学への思いから批判をしているように感じられるWoitの筆は清々しい。

(しかし同じ時期にSmolinという人のストリング批判本も出版されているのだけど、この二書が同時にあらわれたのは、偶然なんだろうか?なにか通じている?それとも時代的なものなのか?)

http://homepage3.nifty.com/mogami/diary/d0712.html#261

まぁ、いい加減なにも出てこないので、だんだん批判(正しくは批評をすべきだけど)が増えてくるのは仕方のないことなのかもしれない。しかし、「場の理論が本筋」というのは、別の意味で違うだろう。場の理論が「(自然)科学」であることは間違いない事実だし、素粒子物理学の発展として大きな役割をはたした。でも、今の素粒子物理学の興味は重力の量子化なわけで、場の理論では糸口すら見えないのが現状でしょう。そのような、ある意味閉塞感がある中で、ストリング理論が素粒子物理学にもたらしたものもまた大きい。
ぼくは、大学院にいるときに、「素粒子物理学トップダウンのアプローチなんだ」ということを酒を飲みながら言った記憶があるけど、トップダウンを「(自然)科学」とは見做さないのであれば、ストリング理論は「Not Even Wrong」なんだろう。しかし、逆にボトムアップのみの範疇で考えていたら今の実験と一般相対論+標準模型にはなんら齟齬は無いので終っている。LHC を待つのか? パラメータを 100 個のオーダーで抱えた理論で満足は出来ない。
ストリング理論というは、いわゆる2次元場の理論で定義されるいくつかの摂動的定義と、IIB 行列模型や Matrix Theory みたいなものまで含めた、もしくはそれらを止揚させたものだと、(個人的に)定義している。L. Smolin の One Matrix model (http://arxiv.org/abs/hep-th/0104050) も (Smolin は違うというかもしれないけど)。

といいつつ、Smolin の本は読んでみたいな。日本語訳は出ないかなぁ、出ないだろうなぁ。

The Trouble With Physics: The Rise of String Theory, The Fall of a Science, and What Comes Next

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追記(2007-01-18) コメントで通りすがりさんより訳本を教えていただきました。ありがとうございます。

迷走する物理学

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